嘘は輝(ひかり)への道しるべ
エピローグ
一年後……


「あきせんせい!」

 一人の園児が愛輝の元へやってきた。

 愛輝は長い髪を切り、短いボブをなびかせに振り向いた。

 幼稚園の園庭で、愛輝は子供達と遊んでいる。



「まいちゃん、どうしたの?」


「あのね。ゆいちゃんがね、さとしくんにリボン取られて泣いているの……」


 愛輝は泣いている園児の元へ行き、腰を落とし園児に声を掛けた。


「ゆいちゃん、どうしたの?」


「取れちゃった…」

 ゆいは握りしめたピンク色のリボンを、泣きながら愛輝の前に出した。

 愛輝はやさしく、ゆいの髪を整えリボンを結び直した。



「ほら、魔法がかかったわ。泣いていちゃ台無しよ」

 愛輝が、エプロンのポケットから出したハンカチで、ゆいの涙を拭いた。


「わ―。ゆいちゃん可愛い。あきせんせい。私にも魔法かけて!」

 まいも、愛輝のそばにかけよって来た。



「いいわよ。でもね、この魔法は、優しい子だけに掛かるのよ。意地悪していると、先生がいくら魔法をかけても可愛くならないのよ…… ほら、まきちゃん、魔法がかかったわよ」



「わ―。まきちゃん可愛い」

 ゆいが飛び上がる。


「本当? やったあ。先生ありがとう」

 まきとゆいが手を繋いで走って行く。


 さとしはゆいに謝っているようだ。
 三人は一緒に遊び出した。


 その姿を、愛輝は優しく見守った。


 誰でも輝けると自信を持ち、そして優しい子になって欲しい…… 

 誰もが願い、簡単に口にするが、今の世の中で、それがどれほど難しい事なのか、愛輝自信がよく分かっている。 


 それでも愛輝は、子供達に幸せになって欲しいと願い、伝えて行きたいと思う……


 園庭を走り回る子供達の声が、元気よく青空へ響き渡った。



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