花の刹那
第一章 桜草



花の燃えるような、美しく、時に激しく生き
る女がいた。

ひと知れず小高い丘の上で生まれ、陽のよく当たる、しかし他に何一つない荒涼たる地に、ひとり、咲き誇っていた。
人目にはつかぬ。群生して咲くこともない。面には出さぬが、根は恐ろしく苦い。

そして何より、美しい。

痛いほどの陽光にも負けず、その花を上向きに咲かせ、たった一人で凛と立つ。
媚びへつらうことはなく、ただ生きることに執着する。しかしそれ故に、周りの目には、強く、美しく映る。
そんな、花の話をしよう。
女の名は、佐野義宗。
勇ましい男名を名乗り、戦乱の世を花の如く美しく生き抜いた、一人の女傑の物語である。
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