今更ごめん、なんてさ
今更ごめん、なんてさ
その女は俗に言ういじめられっこだった。

そいつにまつわる俺の記憶は、とうの昔――そう、俺が中学生の頃に置き去りにしてきていたはずだった。

それが、今更。この期に及んで、記録が更新されるなど誰が予測していただろうか。


「……宮岡君、だよね?」


おずおずと、俺を遠慮がちに見つめるその敬虔そうな姿勢は、相変わらずで。

俺の精神はあっという間に、このイタリアンレストランから飛び上がっていた。


分厚い眼鏡に一度も折り込まれていないらしいプリーツの綺麗に整ったスカートをゆらりと揺らすその女は、どこからどう見てもクラスのヒエラルキー最下層に位置していた。
塗りつぶしたかのような黒い髪は長く、いつもまっすぐにおろされていた。

ウザいくらいに物静かな女は、勉強にしかとりえのないがり勉で、休み時間にはいつも図書館で読書をしていた。

どちらかというと小柄で、肉付きもよろしくないそいつは、どこからどう見てもヒョロヒョロで。

それが、クラスの標的になるには時間もかからなかった。



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