午前0時のシンデレラ

ーー避暑地の高原にホテルを取って、週末に2人で出かけた。

「……旅行なんて、男とはしたことないんだよな?……よかったのか?」

車の中で訊ねた。

「……一緒に行きたいと思ったので…一条さんと……」

そんな風に言われて、ボッと一気に熱が上がりそうにも感じる。

ダメだ、どうにも嬉しすぎて、照れくさすぎる……。

ワンピースを着た彼女が柔らかな微笑を浮かべるのに、目のやり場に困って、

「……うん…ありがとうな…」

ぼそりと言う。

彼女の前では、かっこさえもつけられない自分がどうにも歯がゆくて、

気持ちを切り替えるつもりで、ハンドルを両手でグッと握り締めた。


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