七月八日のながれぼし




足を止める。

震える唇を動かして、息を吐くように声を絞り出す。



「なに、言って……」



あたしはこんなにも必死にバランスを取ろうと、今の関係を壊さないようにしようとしているのに。

なのにどうしてそんなことを言うの。

笑って誤魔化そうとしているあたしの、邪魔をしないで欲しいのに。



「昔も1度言ったけど、それからずっと僕の気持ちは変わってなんかない」

「やめて! 」



その先を聞きたくなくて、声をあげる。

振り向いて、後ろにいたミツを睨んだ。



中学1年生。

あたしの知っているあいつじゃなくなった、すっかり変わってしまった君からの告白。

ずっと覚えていたし、決して忘れられない記憶だ。



ミツの気持ちを知っていたからこそ、あたしの心は星の向こうを想っていた。



「僕は記憶を失ってからずっと、君が好きだ」



5年前、小学6年生の時。

七夕にひとつの約束を交わしたあたしたち。

その秘密を知っているのはふたりきりのはずだったのに、あたしが家に帰った後で、あいつは事故に遭った。



前日の晴れ模様がうそみたいに、その日は大雨が降っていた。

足元をすくわれた彼は神社の階段で足を滑らせ頭をぶつけて。

そうして、あたしの大切な幼馴染────ミツルはすべてを失った。






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