喫茶リリィで癒しの時間を。
3.待ち人。

■秋の訪れ。

 
 九月も半ばになり、太陽の厳しい日差しもずいぶん和らいできた。

 学校が始まってからは、毎日喫茶リリィに行くことはできなくなってしまった。
 今は、平日は週に三日ほど放課後に、土日は朝から行くという生活をしている。

 夏休み前の生活に戻っただけなんだけど、あの生活に慣れていた分寂しさもひとしおだ。


 夏休み前と比べて違うこともある。
 それは、ドリンクメニューを作れるようになったということだ。

 バイトの合間にさゆりさんから作り方を教わって、なんとか一通りマスターできている。一番難しいとされるサイフォンの使い方もばっちりだ。

 さゆりさんは、より俺を頼りにしてくれるようになり、留守番を任される回数も増えた。
 サイフォンを使えるようになったし、少しは男として見てもらえるようになったかなと、ほんのり期待している。


「冬馬くん、それでは買い出しにいってきますね」

「了解です。気をつけていってきてくださいね」


 ある土曜日の午後、お客さんが誰もいなくなったタイミングで、さゆりさんは秋の新メニュー試作のための買い出しにでかけていった。旬の素材を使ったフードやスイーツメニューを考えるらしい。


 きのこやかぼちゃ、さつまいも、そして栗なんかを使ったものを考えているとか。

 

 
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