喫茶リリィで癒しの時間を。

■定食屋かしわぎ。


 ある日のこと。

 店を閉めたにもかかわらず、店内にはさゆりさんと俺のほかにも人がいた。これははじめてのことだ。

 調理服をきた角刈りのおじさんと、割烹着をきたまんまる体型のおばちゃんと、背が高くてスタイルのいい、スーツをきた男性の三人がいる。


 おばちゃんは愛想がよさそうだけど、男性二人はどちらもムスっとしていて怖い。


「冬馬くん、こちらは商店街の人気定食屋かしわぎを営んでいるご夫婦です」


「どうも」おじさんは見た目通りに無愛想だ。


「はじめまして、柏木です。今日はよろしくねぇ」


「えっと、よろしくお願いします」


 と返事をしたものの、何がよろしくなのかわかっていない。さゆりさんから説明を受けてないからだ。


「そして、そちらの男性は、定食屋かしわぎのファンの方、だそうです」


「はじめまして、椿と申します。定食屋かしわぎの味に魅了されたものの一人です。一応、広告業界のリーディングカンパニーといわれている企業の副社長をしております」


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