喫茶リリィで癒しの時間を。
店に誰もいなくなると、さゆりさんはふう、と小さなため息をついた。
「私もまだまだですね。どんなお客様にも気の利く言葉を言えるようにならないと……」
「だったら、竹内さんの本を読んだらいいんじゃないですか? いいこと書いてあるかもしれないっすよ」
「それは絶対にお断りです」
「……あの、どうして竹内さんにだけ冷たいんですか?」
ずっと不思議に思っていたことを質問してみると、さゆりさんはふくれ顔で、
「あの人、すごく女癖が悪いんですよ。友達が彼と付き合っていた時期があったんですけど、友達はいつも泣いていました。私が元カノの友達だって、あの人は知らないみたいですけどね」と教えてくれた。
なるほど、そういうことだったのか。
たしかに、大事な友達を傷つけた男は信用できないと思う。たとえどんなにお金持ちで、仕事が出来て、かっこよかったとしても、だ。
思いやりのあるさゆりさんらしい理由だと思った。
「それにもともと、ああいうチャラチャラした人は苦手なんです」
「お、俺は、大人になっても絶対にチャラくなりませんから!」
「ふふ、冬馬くんはぜひ爽やか系男子になってくださいね」
「はい、かしこまりました!」