花の言葉
それから二週間、忘れず僕は彼女と会って、花を摘む彼女を眺めながら話をした。

連絡先も交換し、毎日寝る前に一回、電話をしていた。

ほのかの恋心も確信へと迫っていた。

ただ、一つだけ忘れていたことは、あの日話したレンゲソウの花言葉を調べること。

そんなことを頭の片隅に置きながら、今日も彼女の元へ向かった。

いつもより、少し遅くなったため、走って向かう。




ついた頃には空が茜色に染まり始めていた。

彼女の姿を見つけた。

一点を見つめながら泣いていた。

忘れていた。

彼女が毎日花を摘みながら泣いていたことを。

僕と話し始めてからは泣いたところを一度も見てなかった。


「遅くなっちゃった。ごめんね。」


僕が声を掛けた途端、彼女が振り向き勢いよく僕の胸に飛び込んできた。

胸に顔をうずめながら肩を揺らして泣いている彼女を僕は抱きしめた。

頼りなく細い体が声を殺しながら泣いている。


「もう会えないかと思った。」


声を震わせて彼女が言う。


「会いにいくって言ったじゃん。どうしたの?」


僕が少し笑いながら彼女の顔を覗き込む。


彼女も少し恥ずかしそうに微笑んだ。


それからいつものように、春の陽気に当てられながら話をして、笑い合い、穏やかな時間が過ぎて行った。

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