年下属性はありません!
進路相談
本部への報告レポートの作成と,掃除と戸締まりをして,本日の業務は終了。

塾長はまだ,本部の担当者と電話で打ち合わせ中のようだ。

「すみません,先に帰りますね,お疲れ様でした。」

口パクで伝えて頭をペコリと下げる。

笑顔で手を振る塾長。

うん,あれはどう考えても年増先生をからかってやろうってやつだな。

それでモテる和也君が実行者になったのもうなずける。

やられたやられた。

でも私は大人だから,次に会ったときにはいつも通り笑顔で接してやる。

そうしたら「あれー,先生普通じゃん。やっぱり大人はからかってもおもしろくないなー」ってなるだろう。

そして反省して二度とこんなバカなことをやるんじゃないよ。

経験豊富な私だから耐えられるけど,同学年の女子なら登校拒否になっちゃうよ。

そう考えながら教室を出て,駐車場を横切ろうとしたそのとき

「先生」

「ぎゃっ!!!!!」

後ろから,男の人の声がした。

男の人っていうか和也君の声がした。

ロボットみたいにカクカクなりながら,振り返ると,自転車にまたがった和也君がいる。

「な,なにしてんの。こんなとこで。なんでいるの」

極力平静を保ちながら大人の対応,大人の対応。だめだ変な汗が出る。

「待ってました」

「もう遅いんだから,帰らないと!ご両親が心配するよ」

今日はもう帰っておくれ。私は,平穏に過ごしたいんだ。

「さっきのことですけど」

やっぱり,触れるのね。
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