人間発注書
「花火はいいけど、手持ちかよ」


男どもで花火をやるなら打ち上げやロケットといった類が主流になるはずだ。


「女子でもいんの?」


そう聞くと、新人は大げさなため息を吐き出して「いや」と、左右に首を振った。


「だろうなぁ。それならもっと大きな花火やろうぜ」


「ダメなんだって。今日は兄貴の家族が帰ってきてるんだ」


新人の言葉に俺はようやく納得した。


新人には5つ上の兄弟がいて、すでに結婚して幼稚園になる子供もいる。


その子のための花火みたいだ。


「なぁんだ。それなら俺は遠慮しとくよ」


一人っ子の俺は自慢じゃないが子供面倒を見るのが苦手だ。


何に泣いて、何に腹が立って、何に笑うのか、てんで見当がつかない。


「薄情な奴め」


「仕方ないだろ。俺は勉強で忙しいんだから」


「勉強なんてしてないくせによ」


新人がチッと舌打ちをしたので、俺はカラカラと笑い声を上げたのだった。
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