sweet voice
20代の頃は、まだ女を演じているようなところがあった。


相手の反応に一喜一憂したり悩んだり、そのたびに傷ついたり傷つけたりして、茜と一緒に乗り越えた。


30歳を過ぎたら、やっぱり結婚や出産のことを意識してしまう。


茜も私も、焦っているのか諦めているのか、簡単に体を許すことに抵抗がなくなった。


だから、このまま伸二くんと会う回数を重ねていけば、ズルズルとつきあうことになり、体を重ねるんだろうな、と想像したりする。


でも、今のところ、伸二くんに『オトコ』を感じない。


あの声の持ち主の素性が知りたいっていう漠然とした想いが、伸二くんの前に立ちはだかる。


もしかしたら、9月のメーカー懇談会に、主が来るかもしれないし。


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