晴れのち曇り ときどき溺愛
「下坂さんからは試験期間と言われました」

「室長は厳しい人だからね。いくら諸住さんが女の子でも普通の男と一緒の扱いをするってことだと思うよ。だから頑張って」


 確かに前に一人で営業先に行った時に飲みに誘われたこともある。いつも誰かと二人で行くのにたまたま時間が合わなくて一人で行ったら誘われた。勿論断ったけど、仕事にプライベートを持ち込まれると困った覚えはある。


「私は営業になれなくて営業補佐かと思ってました。書類の作成とかお茶くみとかコピーとか。試験期間に移動になるかもと」


「移動は今のところないと思う。そのために指導もするし。それとコピーは内容を覚えやすいから新人にはよくさせる仕事なんだ。斉藤も覚えが悪かったから、コピーはかなり長い間させている」


「そうなんですか?」

「お茶も女の子だからではなく室長も暇だったらお茶を淹れるよ。結構コーヒーに凝るから飲めたらラッキーだよ。さ、私も自分の仕事をするから、諸住さんも自分の仕事に戻って。資料室に行くの?」


「はい。行ってきます」

「分量多いから大変だと思うけど頑張って」


 そう言ってクスクス笑いながら、井上さんは自分の仕事を始めたのだった。
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