晴れのち曇り ときどき溺愛
第三章

天気と転機

 井上さんの指導から見城さんに代わり二か月が過ぎていた。


 二か月の間に井上さんから見城さんに代わっての指導にも慣れては来た。でも、二人は教え方が全く違う。井上さんは基礎的なことを丁寧に親切に教えてくれた。見城さんは応用とは聞いていたけど、システム課で言う基礎と応用の差の違いに私は絶句した。井上さんの延長線上に見城さんがいると思っていたけど、見城さんは別次元だった。


 厳しいというかドS。何度心の中で『鬼~~~』と叫んだことだろう。


 自分の資料を作りながら、ちらっと私の資料を見て涼やかな声を響かせる。見城さんが一言目の発音でいいのか悪いのかさえ分かるくらいになったから、その点では成長したかもしれない。


「却下。やり直し」


 この言葉を何度聞いたことだろう。これが今の仕事を始めてから一か月も続いている。自分の仕事が出来ないのは仕方ないのだけど、それ以上に私を驚かせたのは進藤さんの存在だった。


「梨佳さん。コーヒー淹れますね」


 進藤さんは気さくで可愛い人。最初は下坂さんの幼馴染で婚約者と聞いて、心が穏やかでないものを感じた。でも、今は…こんなにも私の中での認識が変わってしまった。


「よろしくです」
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