晴れのち曇り ときどき溺愛
 誘ってきたのは横に座る同期の川添琉生(かわぞえるい)だった。


 琉生ほど名前と顔が一致しない人も珍しい。名前だけ見れば繊細で流麗な雰囲気を感じるが、実際の彼は大学でアメリカフットボールに明け暮れた猛者だったりする。185センチの身長は座ると少しはマシになるが、目の前に立たれると圧迫感も甚だしい。


 見た目は圧迫感たっぷりだけど、気さくな性格で楽しいから一緒に飲みに行くことも多い。アメリカンフットボールをしていたせいもあるのか陽気で楽しいお酒の飲み方をする人だった。同期で何度も飲みには言っているけど、琉生が主催の飲み会なんて今までなかった。


「みんな誘うの?」

「いや。俺とお前だけ」

「いきなりね」

「まあ、俺は飲み会の幹事をするような男ではないのは梨佳が一番よく知っているだろ。真横でそれだけ溜め息を吐かれたら、相談は聞かないけど酒を飲んでパッと気晴らしなら付きあってやろうかと優しさを出してみた。ビールと枝豆、割り勘でどうだ?奢ってやりたいけど給料前で金欠」


 琉生の言葉にドキッとした。私は溜め息を零しているという意識はなかった。でも、琉生が言うのだからそうなのだろう。

「溜め息吐いてた?」

「金欠の俺が飲みに誘うくらいはな。どうする?」

「ビールを飲むのもいいかな」

「潰れたら筋トレ代わりに抱えてやるから」


 そう言いながら、工事現場の男の人が土嚢を肩に担ぐような仕草をする。琉生を見ながら私は笑っていた。





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