晴れのち曇り ときどき溺愛
 琉生は窓際の席に座り、書類を見ながら缶コーヒーを飲んでいる。マーカーを引きながら何かを確認しているので、今後の訪問先への下準備なのかもしれない。


 琉生と会うのはあの日以来で、メールはしていたけど実際に会うのは久しぶりだった。何と答えていいのか分からずに、それでいて、毎日の仕事の忙しさに追われていてあの件については何も琉生に言えてなかった。琉生は休憩室に入ってきた私を見るといつも通りニッコリと笑った。


「梨佳も休憩か?」

「うん。営業室では息が詰まりそうで」

「俺も息苦しくなってここに逃げてきた。今季の見込み先が少し枯渇してきたから棚卸してる。もう少し見込み先がないと厳しい」

 
 いつも通り過ぎる琉生に私の変な緊張が解けていく。今度会ったら、私は何を言おうかとか考えてばかりいた。でも、その肩の力を抜いてくれたのは琉生だった。


「琉生なら大丈夫でしょ」

「今期は結構厳しい。梨佳の方はどうだ?」


「今、下坂さんが有休消化のために長期休暇に入っているの。だから、見城さんと一緒に出来るだけ頑張っている。システム構築が上手く行ったとしても、客先の合わせてカスタマイズするから、またそれからも時間が掛かる」

「でも、前に比べたらいい顔している。仕事が上手く行っているんだな」

「うん。頑張りたいと思っている」
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