魅惑への助走
 「……故郷を後にして上京して、もう五年が過ぎるけど。まだここが自分の居場所じゃないような気がして戸惑ってるんだ」


 並んで座る私たちの正面には、大都会のネオンが果てしなく広がっている。


 私たちの故郷からすれば、都会は眩しすぎて、溶け込みにくく感じられることも少なくないのが現状。


 「でも、私がいる」


 そっと手を重ねた。


 「どんなに居心地が悪い都会でも、私はずっと隣にいるから」


 重ねた手を握り締めた。


 誓いを交わすかのように。


 そして観覧車が、一番高い場所へ到達する直前。


 唇を重ねた時、この世界は私たちだけのものであり、いつまでも変わらないものであると信じられた。
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