スリーアウトになる前に。
2人を紹介したりしてる司会の人を改めて見て、今さら驚いた。

沢田くん? だよね?

スーツ姿で堂々とマイクを持つ様子はあの頃の彼とだいぶ違っていて、気づかなかった。

でも、無駄にでかいと言われていた声で、とにかく元気に楽しそうに話す口調は変わっていない。





乾杯が終わって「ご歓談ください」の時間になると、彼は周りを見回した後スタスタとこちらに向かってきた。

一瞬びっくりしたけれど私に気づいた様子はなく、香の親友であるリサの方に向かった。

「リサさん、 今日スピーチよろしくお願いします。少し前にまた声かけるんで」

「よろしくね、沢田くん。上司なのに司会なんだね、面白いね」

「名ばかり上司ですよ。香さんにはお世話になってますから」

上司? 年下なのに? となんとなく意外に思ってつい見たら、行きかけた彼とそこで目が合った。

目を見開いて驚いて、言葉を失ってるみたい。驚くよね、なんでこんな会で今さら会うの?って。

私の方はできる限り余裕の態度に見えるように気をつけて、「久しぶり」と微笑んでみた。

「沢田さーん!早く!」

と女の子に呼ばれて、彼は引っ張られるように去っていく。忙しそうだ。

気まずいかな。大丈夫だよね、学生時代のずっと昔の話だし、はっきりと傷つけたような関係でもない。
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