手のひら王子様
トレーに乗せてきた食パンと目玉焼きとオレンジジュースを食卓に並べていく。



「大丈夫かぁ?」



その傍でわたしの顔を心配そうに見上げてる椋太朗と目が合った。


「ううん……焦げた」


目玉焼きも満足に作れないなんて恥ずかしいなぁ~ホント。



「なぁ……」


「なに?」



ほらほら~早速……。


「危ないから火使ってるときはぼーっとしたらアカンやろっ」


あれ?



予想とは違った椋太朗の言葉に、わたしはきょとんとして椋太朗を見た。



ちょっと怒ったような椋太朗に、



「うん……ごめん」



つい謝ってしまうわたし。



「やっぱり桜菜には俺がついとかなアカンなぁ~」



こう言って笑う椋太朗の冗談なのか本気なのかわからない発言。



「ハイハイ」



多分、冗談だから軽く流してテレビのリモコンに手を伸ばした。



何考えてんだかなぁ~。



なんて思いながらチャンネルボタンをいじってると、



「ホンマ……はよ戻らなな……」


「えっ? 何か言った?」




わたしには聞こえなかった小さな呟き。



わたしがその意味を知るのは、



もうちょっとだけ先のことだった。
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