魔王木村と勇者石川




「蛍先輩……」



「おっ、なんだだだい?白山さん」

興奮冷めやらぬまま、テンションMAXな返事をするも、白山さんの冷めた目に出会って、首を傾げる。



「やだなー、冬城くん見るみたいな怖い顔しないでよ」



「どうにかしてください」



「えっ…」


蛍は被せるように冷たく言い放った白山さんに圧倒される。


「先輩が勇者が来る前にカオス状態をどうにかするって、言いましたよね?」


「そっ、そうだっけ?」


「それがこのありさまで、しかも魔王様が怒られたじゃないですかっ!」


「そっそうだけど、ほら。白山さんも見てみ」



ねっ転がったまま、白山さんの足を引っ張って指さす。



「ね、良い感じでしょ?」


ツンデレ勇者とマイペース魔王。

この光景を見て何も思わないのでは、この城の者ではない。

っていうか、魔王木村くんに萌えを感じない奴は国民にいない。

なぜなら、それがこの国で生きる条件だからだ。


魔王萌えするか否か。


魔王に萌えない者は国から(蛍の独断と偏見で)迫害を受ける。


これが、蛍の最大の木村くんへの秘密でもあった。


この間も、魔王担当教師が木村くんがマイ雑巾でフキフキしているところを、


『そんなのは誰でも出来る』


と、そうほざいて木村くんを拐って行きやがった。

だから、蛍はその教師をこの魔王の間に二度と来れないような睨みをつけたのである。


いや、実際魔王がやる仕事じゃないし、言いたいことも分かるけどね。


気に入らないんです。


私が言いたいのはつまり、つまりだよ。

へっ、へっ、へっ。


木村くんのフキフキを否定していいのはこの石川くんだけってこと。


ふふふっ。

ふへへへへ。

あははははは。



………あっ、やば。
ガチで蛍が気持ち悪いっ。


< 65 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop