無意確認生命体

美智がこういう風に過保護なほどに私に配慮してくれるのは、今に始まった事じゃなかった。

さっきもそうだったけど、いくら友人とは言え、普通他人の占いの結果まで気にする人はあんまりいないと思う。

だというのに出会い頭、美智はまず私の運勢を教えてきた。

自分の結果ではなく。

……何故そこまでしてくれるのか。


訊いてみたことがあるわけではないが、どうやら美智は彼女の中にある『理想の女の子像』というものを、私に反映したいらしいのだ。

まぁ、理想の女の子といったって、別に彼女は私をお嬢様に仕立て上げたいのでもなければ、学年一のアイドルにしたいというわけでもない。

ただ凡庸《ぼんよう》な16歳の女子高校生らしい振る舞いを私に望んでいるのだ。

美智という子は普段、活発で男勝りでちょっぴりお馬鹿な振る舞いをしているが、その皮一枚下には凄く女の子らしい内面を潜ませている。

ただ、その普段のがさつさがコンプレックスとなって、年相応の内面を表に出すのが躊躇《ためら》われるのだろう。

その点、――私には自覚もなく、迷惑な話でしかないんだけれど――私の面《かお》は他人から見ると、その、かなり可愛い……らしい。

そこで美智は内面のコンプレックスを満たす矛先を私に定めた。


……つまるところ、私は美智のそういった"女の子らしさ"をさらけ出す捌け口として使われちゃっている、というわけだ。
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