無意確認生命体

はぁぁ……。ちくしょー。なんでこんなことに……。

結局私と柏木少年はお昼の卓を並べることになってしまった。

唯一の頼みの綱だった美智は、私と柏木くんを見るや何を察してしまったのか、私の耳元で、


「占い効果てきめん? 柏木もやるね~! 白昼堂々ってヤツ?」


などと囁き、とっとと別の女子グループに混じりに行ってしまった。

まぁ、私の私的事情を知らない美智を巻き込みたくはなかったから、これは丁度良かったのかもしれない。

この昼休み柏木くんから逃れたところで、これだけ馴れ馴れしい性格の男だ。

はっきりとした返事を聞くまでは食い下がってくるだろう。


弁当を中頃ぐらいまで食べ終わったところで柏木くんは切り出した。

「あのさ近江。お前今、彼氏とかいんの?」

いや、もちろんいませんよ。

でも、そう答えちゃうと、貴方を次の段階へ進めちゃうでしょ?

そうなってくると、私としてはますますやりにくくなっちゃうわけで……。


うううぅ~~ん。どう答えたもんか……。


私は購買で買ってきた牛乳パックから伸びた白いストローをくわえ、しばらく黙考した後その口を離し、こう言った。



「柏木くんは、例えばね、――そうだな……、ドーベルマンとチワワが喧嘩をしたら、どっちが勝つと思う?」



「……へ?」

――あ、おもしろい顔してる。

ははは。まぁ、さっきの質問にこの返事じゃ、誰だっておかしいと思うよなぁ。
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