無意確認生命体

"情があれば心配する"


……ねぇ、情ってなんなの?

たとえば、誰かが本当の私を知ったとしても、その人は私に情を掛けてくれるのかな?

お母さんはどうだったんだろう。

私のことが嫌いで嫌いで、それでも自分の恥を晒すわけにいかないから、仕方なく私を育ててくれていたのだろうか?


そんなの……いやだよ……。


お母さんがどんなに私を嫌いだったとしても、私は今だって、お母さんのことが大好きなんだ。

昔も今も、私がまだ自分の身体のことなんて何も知らなかった頃から、ずっと変わらず……。


ねぇ志田。

あんたは私に言ったよね?


"情があれば、人は勝手に心配する"


それじゃあ逆に……情がなかったら、初めっから嫌われちゃっていたら……、どうやっても駄目なの?

お母さんは私の気持ちには、どうやったって応えてくれないのかな?

またこれも、無理を両方望んでしまってる?

これって、やっぱルール違反になっちゃうのかな……。

……でも……それでも、このまま……お母さんに嫌われたままなんて……そんなの、いやだよ。

自分をごまかして会わないようにして、ずっとこのままだなんて、そんなの……もう無理だよ……。


ねぇ志田。

あんたも、本当の私を知ったら……、やっぱり、嫌うの?

お母さんみたいに、私を拒絶するのかな?

あんたにまで否定されたら……私、もう頼れるもの、なくなっちゃうよ……。


だって、私みたいな出来損ないには、お母さんのあの言葉だけが、生きる意味だったんだもん。

それなのに、たったひとり、その言葉を曲げてでも……あんただけは……拒めなかった……。

お母さんとの約束よりも……あんたが離れてしまうことの方が、ずっと……つらくて、……恐かったから。

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