無意確認生命体

「それに私、貴方達に罪が掛けられないように根回しまでしてあげたのよ?」



柏木は、もはや私と話すときにお約束のように見せるようになっている、煙に巻かれたような顔をした。

「私、さっきの休み時間に職員室へ行って、進言してきたのよ。"私、昨日の事件の当事者でした"って」

それを聞いて柏木は青ざめ、そして何か言おうとしたが、私は構わず話しつづけた。

「"昨日、美智と会う約束があったけれど、彼女は部活があったので、私はひとり教室で夕方まで終わるのを待っていました。すると見たこともない中年のおじさんが教室に入ってきて、突然襲われてしまいました。私が抵抗すると、そのおじさんは逆上して、机や椅子を投げつけてきました。その時、その物音を聞きつけて、教室に人が近づいてくる足音が聞こえたので、そのおじさんは逃げてしまいました"」

私は淡々と語る。

実際のところ先生には、これに志田少年武勇伝やらが入った内容が吹き込まれているが、こいつはそんなこと知らない。

なら、こいつらにとって意味のない部分は省くべきだ。

柏木は呆然としている。

「な、なんだよ、それ……」

わけがわからないのだろう。

ゾンビか化け物でも見るような目で私を見ている。

「どう? これ。完璧でしょ? だから、貴方達が"大人しくしていてくれれば"、疑いがかかることもないわ。安心してね」

にっこり笑顔。


うわぁ。

私って、開き直ればこんなさぶいことまで出来るんだ……。

役者とか、むいてるのかも。

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