無意確認生命体

私の席は、窓側一番端の後ろから二番目だ。

後ろは当然柏木で、ひとつ前は榎本、その前は江尻さんという女の子、その前が伊勢くんという男の子で、最前列が浅瀬さんだった。

まぁ名簿順で席が並んでるんだから、『あ』で始まる苗字の人なら、大抵席は一番初めの、あの位置になる。


休み時間になり、最前列に座っている、浅瀬さんの様子を見てみる。

彼女は何やら、漫画の単行本を読んでいるようだった。


う、うう……これから、どうしようか。

いったいなんて話しかければいいの?


私は普段、美智のように気軽な性格でもなければ、柏木のように気安い性格でもない。

社交性がないとまでは思わないが、人見知りはする。

まして、きっかけも何もなく、他人に気軽に話しかけられるような人間じゃなかった。

このクラスになって、ひと月とちょっと。

まともに話せるほどの相手は、美智を除けばまだ、隣の席と、その後ろの子ぐらいのものだった。



(余談だが、最近この二人も、柏木の馴れ馴れしさを少し煙たがっていた。良いことである。)

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