暗闇の中から救ってくれたのは大好きな君だった。
「…………よろしく。てかあな…」

名前で…せめて、苗字でもいいから呼んでほしい。

そう思ったら体が勝手に動いていた。

「僕は本野秋斗!」

そう叫ぶと、知ってるんですけど、と言わんばかりの冷たい目線が贈られる。

「ていうかあたしにはなしかけないでくれない」

この人は心を----閉ざし切っているようだ。

この人には…過去にいったい何があったのだろう。

知りたい、そう思うと同時に支えたいなんて思ってしまった。

そしてクラッと彼女が倒れそうになっていたので思わず支える。

こうするのは梨華以来だ、そう思ってあの悲しい気持ちがよみがえる。

『秋…斗………。ごめんね…だい…すき…』

最期の梨華の言葉。

やっぱり何度思い出しても悲しい。

「大丈夫?」

そうだ。ここにいるのはーー〝梨華〟じゃなくて〝千鶴〟さんなんだ。

そんな気持ちを振り払って声をかける。

第一、ほかの人のことを考えながら、接するなんて千鶴さんに失礼すぎるじゃん。

「別に…」

そう言っている千鶴さんはやっぱり表情は変わっていなくてちょっぴり…さみしくなってしまった。














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