海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
教壇に上がった時、相葉先生がチラリと私を見た。

そして一瞬私と目が合うと、すぐに反らして日直に号令を促した。


授業中、何回も相葉先生の笑顔を見たけれど、

その笑顔が私に向けられたものでは無かった事が、一層私を寂しくさせた。



結局、この時間は相葉先生と話す事も、もう一度目が合う事も無く終わった。



誰にも言えなかったけれど、本当はすごく苦しかったんだ。

相葉先生を見つめる事も、

見つめてもらえない事も。



しかも私はどこまで運が悪いのか、この日は大崎先生の授業もあった。


この時、初めて知ったのは、

“相葉先生にフラレた次の日に大崎先生の授業を受けるのは、精神的にかなり辛い”

という事かもしれない。



大崎先生は私が何度手を伸ばしても掴むことが出来ない、相葉先生の愛情を独占している人で、


何より悔しいのは、憎いんだけど憎みきれない、生徒の憧れの対象でもある大崎先生の人柄。


そして自分も、憧れている生徒の中の一人である事。



嫉妬と憧れ。


“可愛さ余って憎さ百倍”とは、こういう事なのだろうか。


このまま相葉先生を諦めないという事は、大崎先生との戦いでもある。


尤も、大崎先生は私の事をライバル視なんてしていないと思うけれど。


だけど…


『大崎先生を超える事が出来たら、相葉先生に振り向いてもらえるかもしれない。』


そう思い、願い続けていなければ、何度もやってくる辛い出来事を、きっと私は乗り越えられなかったと思うんだ。


この時も、

まだ知らない、この先も…。
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