海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
―――――…

終業式から一週間が経ち、大晦日になった。


しょっちゅう先生の事を思い出しては、会いたくて、会いたくて、寂しい気持ちになっていた。


私が住む街の冬はとても雪が多くて、とてもじゃないけれど、冬道で自転車が乗れるような感じではない。


お正月に年賀状を配る郵便屋さんが、一生懸命自転車を漕いでいる姿を見ると、心から応援したくなる感じだった。


『これが夏だったら相葉先生の家まで自転車で行く事が出来るのに。』


何度もそう思ったけれど、この時期は歩いて行く事さえも厳しいものがあった。


交通の便が悪い田舎だし、どこに行くにも途中まで両親に送ってもらわないとなかなか行動ができない。


本当に不便で、この頃は今では考えられない程、家の中でじっとしている事が多かった。


そんな状態だった大晦日のこの日。


朝から晩まで家族と過ごし、夜は少しだけ瑞穂と梢と電話でお喋りをして、

それから数時間後、静かに新年を迎えた。



新しい年―…


4月には3年生になる。


相葉先生と一緒に過ごす、高校生最後の年だ。


この年が私にとって忘れられない特別な一年になるなんて…


思ってもいなかったんだ。
< 129 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop