海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「返事はすぐじゃなくてもいいから。ちょっと考えてみて?」

「はい、分かりました。ありがとうございます。」


笑顔で見つめる椎名先生にお辞儀をし、


「失礼します。」


と、私はその場を立ち去った。



一人で歩く帰り道、


『私にパソコンを教える事なんて出来るだろうか。』


という不安を多少感じていたけれど、

それでも、

声をかけてもらえた事がとても、とても嬉しくて、何度も頬が緩みそうになった。




帰宅後、すぐに電話で母に報告し、仕事から戻ってきた大和にも話した。


「いいんじゃない?」

「良かったね!」


二人がそうやって応援してくれた事で、私の決心はしっかりと固まっていった。




数日後の放課後―…



帰る前に立ち寄った職員室で、


「本当に私で良ければ、どうぞ宜しくお願いします。」


そう、椎名先生に伝えた。



「やった!あなたなら大丈夫よ!どんな人も努力していけば一人前になれるんだから。頑張りましょうね!」


そんな椎名先生の嬉しそうな言葉と励ましに、


「はい、頑張ります。宜しくお願いします。」


と、私は前向きな気持ちで答えた。



せっかくのチャンスを無駄にはしたくないと、

精一杯やってみようと、心から思ったんだ。




それに、心の中では相葉先生を思い浮かべていた。


相葉先生は私の心の中からずっと消える事が無かった存在だった。



『相葉先生、私は先生と同じ道に進みます。』



心の中で呟いた言葉は決して届く事がないけれど、それでも報告せずにはいられなかった。


私は無意識の内に、相葉先生の背中を追いかけていたのかもしれない。


もう二度と見ることの出来ない、


相葉先生の背中を―…
< 366 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop