海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「言ってみなくちゃ分からないじゃん!」


瑞穂はそう言って私の背中を押してくれるけど、その時の私には、どうしてもそんな前向きな気持ちにはなれなかった。


“先生と生徒”


恋人になるには難しい関係であること位、恋愛経験のない私にも分かっていた。


「確かに、言わなかったら今のままだけどねぇ…。」


梢はそう言ったきり、腕を組んで“うーん…”と唸った。


二人の言葉は間違いないことだ。


「どうするかはさくが決める事だからこれ以上は言わないけど、でも、あんまりウジウジ悩んでるのは好きじゃないかな。」


瑞穂はサラッとそう言うと、再びお弁当をパクパク食べ始めた。


私が瑞穂の立場でも、きっと同じ事を思うだろう。

無意識でも溜め息連発な上に、悩んでばかりで自分がどうしたいのかも決められない。

当然、見ている周りの方が嫌な気分になると思う。


ごめん、瑞穂。

ごめん、梢。

こんな私、嫌だよね…。


「二人ともごめんね。どうもありがとう。ちょっと考えてみる…。」


そう言って、私は申し訳無さそうに微笑むと、自分の気持ちが少しでも切り替わっていくように、明るい話題を振りまきながらお昼休みを過ごした。
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