海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
私は長身の相葉先生を何度も見上げていた。


笑顔の相葉先生を何度も。


『時が止まればいいのに。』


何度もそう思う私をパレードの眩い光が包み込む。


そして…


パレードを見ながら衝動的に、


私はそっと、先生のジャケットの裾を掴んだ。


軽く掴んだけれど、多分、先生は気付いていただろう。


にぎやかな音楽に紛れて私は、


「好き…。」


そう、言葉にしていた。


相葉先生は真っ直ぐに前を見つめたまま、


「うん。」


と、微かに返事をした。



眩い光の色が赤から青へと変わっていくように、


『なんて大胆な事をしちゃったんだろう!』


そう思いながら、チラッと相葉先生を見上げた時、


先生は姿勢を変える事無く、真っ直ぐ、でも少しだけ上の方を見つめていて、


その表情は真顔に見えたけれど、少しだけ微笑んでいるようにも見えた。



先生の「うん。」は、


『河原が可愛いキャラクター好きなのは分かったよ。』という意味だったんだろうか。


それとも意味を理解していながら、うまく交わしたのだろうか。


相葉先生の真意はどうであっても、掴んでいた手を振り払われなかった事が私にとっては救いだった。


その事がより一層、私を幸せな気持ちにさせていた。
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