海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
修学旅行最終日。


今日の東京での自由行動を最後に、私達は地元に戻る。


その自由行動は、決められた場所でバスから降ろされて、少しブラブラしただけで終わった。


時間も少なかったし、一体どこを歩いていたのか…


正直、よく分からない。


その間、相葉先生を見かける事もなかった。


思えばこの旅行中、本当に相葉先生を見かける事が少なくて、


『先生達は一体どこにいなんだろう。』


そんな疑問が消える事はなかった。



短い自由行動が終わると、私達は空港へ向かった。


疲れていたのだろう。


飛行機に乗り込むと、私はすぐに眠りについた。


目覚めて気付いたのは、みんなも同じ様子だったこと。


行きと違って、帰りはとても静かな飛行機の中だった。


その静かさは飛行機を降り、バスに乗って学校に着くまで続いた。



学校に到着すると、生徒の両親が沢山迎えに来ていた。


私の両親の車もバスの中から見かけて、きっと母が迎えに来ているのだと思った。



「じゃ、ゆっくり休んで疲れを取れよー。解散!」


担任の先生の合図で、みんなそれぞれ去っていく。


私を含めて、殆どの生徒が旅行の途中で一旦、荷物を送っていたというのに、それでもみんな両手いっぱいに荷物やお土産を抱えて歩いていた。


「じゃあ、また月曜日ね!」


そう言って、お迎えが来ている瑞穂や梢とも校門の手前でバイバイした。


嬉しそうに両親の元へ駆け寄っていく友達。


お迎えがないのか、数人で歩いている子達。


私は人波の中で立ち止まり、相葉先生の姿を探した。


振り返ると先生は少し離れた場所で、色んな生徒達に「さようなら」と声をかけている。


ふいに相葉先生と目が合った。


先生には聞こえていないかもしれないけれど、


「さようなら」


そう言って、笑顔で手を振ってみると、先生も「さようなら」と笑顔で答えてくれた。


空耳かもしれないけれど、私には先生の声が聞こえた気がした。
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