海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「ん?」


相葉先生は用紙から目を離す事無く、添削をしながら返事をした。


「修学旅行の時、どんなお土産買ったの?」


ストレートに

“バッグは誰の為に買ったの?”

なんて聞ける訳も無く、私は遠回しな質問をした。


「うーん…。」


先生は宙を見上げて、動かし続けていた手を止めた。

その姿は、まるで記憶を手繰り寄せているようだ。


「お菓子とか、お守りとかかなぁ…。」


そう言って、かけているメガネを直すと、首を傾げながら用紙に視線を落とした。


「…そっかぁ、私もそんな感じ。同じだね。」


私は笑いながらそう答えたけれど、心の中に引っ掛かっているものは、いつまでも取れないままだった。



『真実が知りたい。』


そう思っていたけれど、相葉先生の口からバッグの事が出てこなかったせいで、これ以上は聞けなくなってしまった。



「…みんないっぱい買ってたよなぁ。」


急に相葉先生が、ニコニコと笑いながらこちらを見た。


その優しい笑顔に見つめられるだけで、モヤモヤしていた気持ちは吹っ飛び、先程よりも早く、大きく高鳴る胸の鼓動に襲われる。


「そうだねぇ。まぁ、私も人の事は言えないけど。」


ドキドキしながら答えつつも、脳裏を過ぎったのはディズニーランドでの告白の事。



『パレードを見ていた時の“うん”はどういう意味だったの…?』


この事を確かめたいという気持ちも、お土産の事と同じように募っていた。


でも、意味が知りたいと思っていても、また傷付く事になるんじゃないかと思ったら、怖くてなかなか聞く事が出来ない。


怖かったけど、意を決して“聞いてみよう”と口を開きかけた時、


「はい、おしまい!」


相葉先生はそう言いながら、赤ペンでサラサラと修正箇所や入力文字数を書き込むと、


「良く出来てる。この調子で頑張れ!」

と、私に用紙を差し出した。
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