独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

嫌だし憂鬱だけれど、大人しく実家に帰るべきかもしれない。

すべてを諦め、肩を落とした時、倉渕君が言ったのだ。「ここにいるのも気を遣うだろ。店を変えようか」と。


「いろいろありがとう」


彼に笑いかけると、倉渕君も微笑み返してくれた。


「あっちの店には個室もあるし、びくびくしないで済むぞ。ゆっくり食べながら、明日の作戦でも立てればいい」

「お酒飲ませてくれれば、万事解決」

「またそれか。お前はバカか! 自分の身体を大事にしろ!」


叱られているのに、声は怖いというのに、彼の眼差しにはたっぷりの優しさがある。

倉渕君の綺麗な顔から目を逸らせずにいると……足がもつれてしまった。

小さく悲鳴を上げ、数秒後、私は息を飲んだ。

倒れそうになると同時に、倉渕君が私の腕を掴んだ。

そのまま引き寄せられ、私は彼の胸元へと倒れ込む。

引き寄せられたというよりは、抱き寄せられたと言った方が正しいかもしれない。

私は今、彼の腕の中にいる。

身じろぎして顔をあげれば、もちろんすぐそこに倉渕君の顔があり、彼もじっと私を見つめている。

嫌悪感なんてなかった。突き飛ばして、彼の腕から逃げ出そうとも思わなかった。

ただ、触れている場所が熱かった。


< 36 / 220 >

この作品をシェア

pagetop