君は生徒、愛してはいけない
「まだ寝るなよ。寝てたら叩き起こす」

そう言って風呂に向かうと、後ろからはぁーいと気の抜けた返事があった。


シャワーを浴びながら、必死で自分を落ち着かせた。

人生でこんなに緊張したことは数えるほどしかない。

臆病な自分に喝を入れて、おばあさんの言葉を胸に、風呂から出た。


「お風呂長いね」

華はそう言って俺のベッドでドライヤーを持って待っていた。


「こっちきて、髪の毛乾かしてあげる」


俺は冷蔵庫からキンキンに冷えたビールをもう一本とって、華の前に座った。

髪の毛伸びたね、と言いながら子供を可愛がるような手つきで俺の髪を触る華。


俺はひたすら無言でビールを飲んで、髪が乾くのと同時にビールはなくなった。

持ってきてあげる、と言ってキッチンに向かった華は、ちゃっかり自分の分も持って帰ってきた。



ふたりでソファに座りなおして、さあ何から言おうかと考えていると、無言のまま時間がどんどん経っていく。

2本、3本と空き缶が増えて、俺はやっと重い口を開いた。


「華」
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