難攻不落な彼に口説かれたら
雪乃が危険な目に遭ったと聞いて、心中穏やかではなかった。

「どういうこと?」

田中さんに詳しい説明を求める。

「雪乃ちゃんが階段から落ちた後、反対側に逃げていく女の人を見たんです」

雪乃を心配してか、田中さんの目は真剣だった。

「教えてくれてありがとう。雪乃、押されて落ちたの?」

なるだけ自分の感情を抑えて雪乃に聞くと、彼女は呟くように答える。

「……自分でもよくわからない。『いなくなればいいのよ』って若い女の人の声がして、次の瞬間には階段から落ちてた」

雪乃の説明を聞いただけでもゾッとした。

このタイミング。

拓海が何かしたのか?

だとしたら許せない。

「今日は休んだ方が良かったんじゃない?」
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