「先生、愛してる」
3
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いつもと変わらぬ忌まわしい朝。
照りつける太陽が肌を焦がすようで、外へ出ることすら億劫に感じる。
しかし、どれだけ憂鬱に感じる朝でも、友人や恋人と歩けばきっと気分も和らぐのだろう。だとしても、無理に誰かと言葉を紡ぐことも、共に肩を並べて歩くことも、今の自分には特に必要だとは感じない。
結局、友達など作らずに、一人でいることが一番心が安定するのだ。泣き笑うことも、障害にぶち当たることもない。けれど日常とは日々移り変わりゆくもので、いつまでも平穏に変わりなく過ごせるとは限らない。時には大切に温めていた幸せを壊す者も現れる。
そう、例えば昨日、突如私の元に現れた岸田のように。
「柏木さん、おはよ!」
瞬間、肩を手のひらで弾かれる。驚いて振り向いてみると、そこには岸田が柔らかな笑みを浮かべて立っていた。
「おはよう…」
噂をすればなんとやら、というのはまさにこの事かと思わず肩を落とす。
「どうして」
どうしてここにいるの。そんな意味合いを込めて呟いた。
「どうしてって、通学路だから?」
なにがおかしい、というかのような表情で岸田は言った。
「…もういい」
話しても無駄だろうと思い、すぐさま会話を断ち切る。通学路だとしても、出来れば見かけても話しかけに来ないで欲しかった。言えるはずもない言葉を飲み込む。
「いつも一人で登校してんの?」
「そう」