「先生、愛してる」

7






ニュースで、岸田拓が殺害されたと報道されたのは、私が彼に襲われた日から四日程経った午後の休日のことだった。


場所は精華高校近くの住宅路。岸田は学生服を着用しており、恐らく学校帰りの事だったと思われている。
目撃者はいない。死亡推定時刻は昨日の午後十七時から十八時の間。
岸田の胸には刃物のような傷跡が残っていたとして、通り魔の可能性があると今も捜査を進めているらしい。

テレビの中のコメンテイターが「最低だ」「許せない」とありがちの言葉を述べている。


しばらくすると、画面が近辺の風景へと移り変わった。


────被害者の男性はどんな方でしたか?


取材者が街ゆく生徒に声をかけている。

すると捕まった生徒らは決まって「明るくていい人でしたよ」「ムードメーカーのような人で」と答えていた。しかし最後に「最近様子がおかしかったのも確かです」とも言っていた。


取材者はさらに質問を投げかける。


────様子がおかしいというのは?


そして、テレビの中の生徒は言った。


「確か一年前いじめられてた女の生徒に、絡み始めた頃からだったかな。名前は」


瞬間、見ていたテレビの画面がプッと音を立てて真っ黒に染まった。
後ろを振り向くと、先生がテレビのリモコンを机上に置いたところだった。


先生と目が合った。互いに何も発することもなく、ただただ視線を交える。それはほんの五、六秒程度のものだっただろうが、私にはとても長く感じる時間だった。


真っ先にその沈黙を打ち消したのは私だった。先生から視線を外すことなく、声を出してくすくすと笑ったのだ。


「早すぎる潮時ですね」

















< 70 / 104 >

この作品をシェア

pagetop