「先生、愛してる」


「僕もだよ」


先生は答えた。


その言葉が聞けるだけで十分だ、と思った。もっと触れてほしい、与えて欲しい、そんなことは思わない。自身を思ってくれているという確証さえ取れれば他に何もいらないのだ。
また、先生もそれはきっと同じなのだろう。だから、同じ一定の場所から私に接する。

ただ見つめあって、言葉を交わして、それで終わりだ。それ以上は求められない、求めてはいけない。関係の進展さえも。先生と生徒である以上、そこが決して超えてはならない一線なのだ。


私は先生を、先生は私を、理解している。わかっている。だからこそ調律の取れる関係なのだろうと、つくづく思う。


もしも、求めあってしまったそのときは、この関係の消滅の意を示している。無理矢理にでも、あらゆる手段を駆使して壊さなくてはならない。

しかしそんなこと、決してありはしないと思ってはいるけれど。



_____ねぇ、そうでしょう?先生。




先生は、意味ありげに笑った。











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