例えば君に恋しても
地獄に舞い降りた救世主


『市橋家、時期跡取りである、市橋新一氏の就任について、財閥に詳しい専門家の話を聞いてみましょう。』

午前9時

食パンにママレードのジャム。

紅茶に砂糖はいれない主義。

朝のワイドショーを聞き流しながら適当に朝食を済ませると、婚約者がこの間、私の25歳の誕生日にプレゼントしてくれたブランドのショルダーバッグを肩に下げてマンションを出る。


目的の無いお散歩。

つい数日前までのこの時間はあせくせ働いていたかと思うと不思議な気分だ。


「寿退社とか、夢叶ったなぁ・・・」と、言っても挙式はまだ半年後。

お相手は5歳年上の弁護士。

知り合いの紹介で1年前からつき合い初めて、お互いフィーリングが合ったのか、とんとん拍子で2か月前にプロポーズされた。

初めて瑛士さんに会った時、あの知的でクールなルックスと裏腹な甘い笑顔のギャップに一目惚れ。


職業、性格、ルックス。総てにおいて申し分ない彼とまさか本当に結婚できる日がくるなんて知り合ったばかりの当時の私には想像もできなかった。



「奥さんには家庭を守ってもらいたいんだ。」彼の一言で、仕事なんて直ぐに辞めることを決意した。


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