例えば君に恋しても
気になる存在





「希望条件などございますか?」

職業安定所の受付で、聞かれる質問にいちいち、悩んでる自分がまどろっこしい。


できれば早く仕事に就きたい。

でも

できれば私を誰も知らない土地にでも行って働きたい気持ちもあれば

この街にいれば・・・もしかしたら

瑛士さんにもう一度だけ会えるかもしれないという馬鹿な期待。


どっちにしても不純すぎる動機しかでてこない。


暫く、友達からの連絡がきても一切、返事ができてない。


私の現状をまだ、誰にも伝えることができてない。



「あー・・・もう少し、煮詰めてからまた来ます。」

「はい。いつでもお待ちしてます。」


受付のお姉さんの不思議そうな笑顔に笑顔を返して

職業安定所を出た私を、待ち構えていたように一人の男性が声をかけてきた。


「仕事、探してるの?」

どっかの企業のスカウトだろうか?

こんな所で仕事探してる人間を捕まえようとしてるあたり、ろくでもない会社に違いないだろう。

よっぽど人手が足りないのかしらね。

一見、ちゃらついてるような容姿こそはしていても、身に付けてるものやたたずまいから品の良さを漂わせる彼は、私と同じくらいの年頃だろうか。


「一応ね」

一言、返事をしたのがまずかったのか、ツンとした態度をとってもついてくるスカウトマン。


ぺらぺらと、くだらない事を喋りながら

何がそんなに楽しいのか

堪らず、ため息をついて、睨み付けても動じない。


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