うつりというもの
すると、首に赤い線がゆっくりと描かれ始めた。

「おい、待てよ、まさか…」

そのまさかだった。

赤い線が端まで描かれた。

「ちょっと、待て…」

柳静香の首は手前にズレ始めた。

「だから、ちょっと待てって!…う、うわぁああああ!!」

池田が腰を抜かして後ろに倒れると、その首がゆっくりと落ちた。

そして、こっちを向いたまま揺れていた。

他の捜査員も悲鳴を上げたが、赤井と三田村はそれを押し止めた。

まだ次があるからだ。

首の揺れが止まった。

他の捜査員は呆然として、赤井と三田村はゴクリと唾を飲んだ。

柳静香の顔の表情が変わり始めた。

見る見るうちに、その皮膚や髪の毛が腐り始めた感じで、異臭も放ち始めた。

「うわあああああああ!!」

池田や他の捜査員が悲鳴を上げていた。

だが、渕上小百合と違って、全てが溶け落ちる事はなかった。

腐敗という状態で止まったのだ。

身体の方は何も変化はなかった。


「多分、この身体は小木美智子だろう」

赤井がハンカチで口元を覆いながら言った。

「た、多分そうですよね…」

三田村も同じく口元を覆いながら言った。

池田達は横で喚いていた。

「で、撮ったか?」

赤井は隣でビデオを撮っていた鑑識課員を見た。

「は、はい…」

その鑑識課員は蒼ざめた表情で頷いた。

「これで、俺達の報告が嘘じゃなかったと分かりますよね」

三田村が赤井を見た。

「まあな」

赤井は鑑識課員が確認しているビデオを見ながら答えた。
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