God bless you!~第3話「その価値、1386円なり」
嫌だ嫌だ。絶対、嫌だ!
「ちょっと、あたし買い物行ってくる」
俺だけに分かるように、右川は顎で指図した。
これ以上、山下さんには聞かれたくないという事だろう。受けて立つとばかりに、「ちょっと、俺も相棒買ってくる」
浅枝とノリを店に残して、俺は右川と2人、店外、アパート民家の立ち並ぶ路地に対峙した。
「ここんとこ、あんたって病気?勘違いが止まらないみたいだけど」
「勘違いかな。あ、誘ったのは、おまえの方だった。思わせぶりにチケット2枚も寄越して」
「勘違いでしょ。後輩ヤリマンとか言われていい気になってさ。応援だの協力だの、自分に人望があるとか有能だとか、本気で思い込んで喋ってる辺りから恥ずいんだよ、あんたは」
「そこは勘違いなもんか。永田だって俺の応援を欲しがるし、重森にだって呼び出されるし。あー忙しい」
「だーかーらー、それが勘違いなの。永田が欲しいのは後輩の応援。重森は永田会長の意向が知りたいだけ。どっちも、あんたなんかオマケなんだよ」
「おまえこそ勘違いすんな。何いい気になって浅枝に入れ知恵してんだよ。俺の後輩だろ。勝手に指図すんな。ヘラヘラ取り入ってんじゃねーよ」
ふと、浅枝とノリが雁首揃えて、入口の扉からこっちを見物している事に気が付いた。
「2人共、今日も、随分仲良いですね」 浅枝が阿木のような事を言うと、
「とっとと2人で仲良く映画に行けばいいのにね」 ノリまで何を言うのか。
勘違いも甚だしい。「んな訳ねーだろ!」
聞いていれば分かるはずだ。物を盗った盗られた、返せ、返されても許さない、俺と右川との間には、そんなやり取りしかない。騙されたとか、誤魔化されたとか、盗まれたとか、そんな屈辱の数々。それしかない。
俺を元から居ない人間だと見なす、そんな強引な決着は、1年前と何も変わっていない。
俺はゆっくり近づいて、上から目線で右川を睨みつけた。
俺を見上げる右川の目は、いつかのように怯えてはいない。
こんなグダグダ。許されないままのこれから。
忘れろとか、見知らぬ女子に祭り上げろとか、どれを取っても俺にとっては面倒くさくて、ツマんない事ばっかりだ。そんなの〝嫌だ嫌だ。絶対、嫌だ!〟
それに引き換え、もう会わないとか口利かないとか、そのどれを取っても、右川にとって〝絶対、嫌だ〟とは程遠い。
おまえだけ、そんな楽ちんが許されると思っているのか。
「俺は決めた。いつかの戦利品を、今、ここで貰うぞ」
そう言った途端、何故か右川は急に怯え出した。
大声で、「嫌だ!!」と叫ぶ。まだ何も言ってないのに。
「言うな!黙れ!あたし学校辞める!死んだ方がマシ!あんたと付き合うなんて死んでも絶対に嫌だからねっ!」
「リアルに勘違いすんな!んな訳ねーだろっ!」
右川にとって、それが1番嫌な事なのか。
それなら!……と、一瞬、180°間違った方向に進みそうになった。
待て待て、頭を冷やせ。それだと、俺の罰ゲームになってしまう。
これは、最初で最後の、俺の頼み事だ。

「右川カズミ。おまえが会長やれ!」





<Fin>

第4話 予告。

.:*゚..:。:. ☆o。.:*゚:.。:. ゚・*:.。..。.:*・゚ o☆.: ゚・*:.。..。.:*・
2泊3日の修学旅行。

「ねぇー、もう帰ろー……」と、駄々をこねる、右川カズミ。
「引きずってでも連れて行きます」と、山下さんと約束した手前、旅行中、沢村は右川を監視する事になった。なってしまった。

右川には、恋の予感……真面目なスポーツ男子の〝スーさん〟。
そして、沢村にも新しい恋の予感が……まるで正反対の女子2人(!)から、アプローチが舞い込んでくる。

「ちょっと遊ぶ?」と、駆け引きが悩ましい、宮原マヤ。
「資料館の人形が……あんまり凄くて。怖かった」と、泣き出す、谷村アム。

バスケ部と吹奏楽部の争いに巻き込まれる、修学旅行。
〝雪解け〟……そんな、思いがけない旅行土産のある、修学旅行。
ヤバい忘れ物(?)が、沢村を悩ませるという、おまけ付きの、修学旅行。
.:*゚..:。:. ☆o。.:*゚:.。:. ゚・*:.。..。.:*・゚ o☆.:*゚.*:.。..。.:*・

沢村は、修学旅行を無事終える事が出来るのか。
ご期待下さい♪
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