甘え下手の『・・・』
『あとは変わり者同士好きにやってください』
そう言って今井さんはフロアを出ていった。

私は急に力が抜けて椅子に座り込んでしまった。

「大丈夫か?」

「あぁ、うん、ごめん、大丈夫…」

「大丈夫じゃないだろ」

腕を引っ張り立たせてくれる。その腕を離さないまま向き合う。近い距離に恥ずかしくなったが

「筧くん」

視線を合わせ声をかけると「ん?」と答えてくれる。

「筧くん、ごめんね、私、逃げてた。自分の気持ちから、筧くん、失いたくなくて」

ゆっくり話す私に筧くんは何も言わず聞いてくれていた。掴まれた腕は離されいつの間にか私の手を握っていてくれていた。

「素直になれない私にいつか呆れちゃうんじゃないか、嫌になって離れちゃうんじゃないかって、そう思ったら怖かったの」

握られた手に力が入った。

「筧くんがいなくなったら、『一人で大丈夫』なんて考えられないって思った…ぜったい耐えられないって…」

「いなくなるわけねぇだろ」



< 64 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop