「裏切り者は、」




本屋に寄った。

客先が指定する時間には
まだ少しだけ早かったから。


俺はカッコ付け野郎だから
いつもはエロ本なんか
立ち読みしない。

ただ、おトイレ借りようと
その、成人雑誌コーナーを
通り過ぎた時、
目が釘付けになった。



「◯ゾ嫁」

って、
書いて有った気がする。



(…マ◯嫁…??)


一瞬にして
脳内は占拠された。



トイレで掛け算の2の段を
そして3の段を唱える。

目標以外の、
あらぬ方向に飛ばさぬ為。


…意味が解らないなら
それでいい。





…トイレから出て、
辺りを見渡す。



俺の今からの
心に秘めた作戦を、
阻む奴はいないか?




…少し離れた場所には
サラリーマン。

…奴は大丈夫だ。



遠いレジには…おばさん。




その他、まばらな人影は
ジャガイモと大差無い。






…イケる。




その時、ガラス越しに
外を確認しなかったのが
悔やまれる。





堂々と男らしく、
狙いの本を手に取る。




おおー!!!!
なんと!!!!!!!!!
キャー!!!!!!!!!!!
マジすかー!!!!!!!!!!

(ハート)







「猫のおじちゃん!!!!」

ひーーー!!!!



「あ、おぱいの本??
おぱいの本、見てるの??」



「しーっ!!
ともくん、こ、こんちには、
ちょ、意味わかんないな、
だ、誰と来たの?」

「ママー。」

「そ、そうか、いいかい、
ともくん、まずね、、」



さっと本を戻すつもりが、
なんか裏表紙がめくれて、
上手く戻らん、、、、、



くそ、
しゃがみこんで
チビの目線で、、、、、、
小声で、、、親近感、、、、




「い、いいかい、ともくん、、
おじちゃんはね、
おぱいの本なんか、見てない。
言ってごらん?」



「?おぱいの本なんかー、
見てないっ。」

小声。


「いい子だ。
アイス食べるか?
男と男の約そ……お?」





?その瞬間、
小さな少年は走り出す、



(…え?)))))))))




「ママー!!!!
猫のおじちゃんは
おぱいの本なんか
見てないよー!
アイスー!!
買ってくれるってー!」






ぁ、少年の声が
静かな店内に響き渡り、、、

時と空間は歪み歪む。
ムンクの叫び、、眩惑、幻惑、、

クラッ






はっ!? しっかり、俺!



すまん、少年よ、
アイスは次回だっ。
早急に立ち去らねばっ。
君のママに今、会うことは
で、出来ないっ。




せ、先輩、貴方の息子さんに
俺は今、裏切られた。
男と男の約束ってやつを
貴方、教えてませんね?







外に出たら、…雨だった。

まるで俺の、
まるで俺の、、、、、、




いや、少年は自身の
裏切り行為に
気付いてないのかも知れん、

あまりにも若い。





…アイスを…、
買ってやらなかった。



裏切り者は俺の方か?




まあ、いいや。
違う汗出たわ。






チビには敵わん。
しばらくは…、
先輩の家には行かん。






でも今度行く時は
必ずアイスを買って行こう。





…そして、、、

チビに、

男と男の約束ってやつを




教えてやるのだ。



















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