月夜の涙
第三章 嫉妬

私は図書館で寝ていた。
『あの、すみません。』
私は誰かに起こされる。
『はい?』
私は目を覚まし戸惑っている人を目をこすりながら見つめた。
『その本見せてもらえませんか?』
私の下には山の風景があった。
『これ、ですか?』
私は彼に見せる。
『これだ…!』
その人は嬉しそうに見ていた。
『あなたもその風景が好きなんですか?』
『うん。この風景に親しみが持てるんだ。不思議だよね。一回も見たことなんてないのに』
『私もです。同じですね』
私達はお互いに笑いあった。
図書館はステンドグラスがキラキラと輝いていた。






「あれ?私、なんの夢をみたっけ?」
私は身体を起こした。けれど思い出せもしなかった。

ーなんか、とても幸せな夢だったのに…。

私はいつもどうり用意することにした。鞄に教科書を詰め込む。

「んっと。よし!」

私は荷物をもって家を飛び出す。

朔はもう学校に行っているのだろう。私は上機嫌だった。

ーなんでだろう。とても気分がいい。


私は口笛を吹きたい衝動に駆られる。
そして学校に着くと校門で何やら人だかりができている。

ーうわっ。

まさかの荷物検査だった。漫画を没収される生徒が見える。

ーよかった。今日は漫画持っていない!

私は安心して先生に鞄を見せる。特に恥ずかしいこともなかった。しかし、先生の手が何かを掴んだ。

ーえっ?

私はその手が掴んだものを見つめる。そこには誰かの財布があった。先生は何やら紙を取り出してそれを交互に見る。
「あとで職員室に来なさい。」
私は足元がぐらつくような感覚を覚えた。






私は職員室で先生二、三人と話をすることになった。
「私は無実です!その財布も心当たりがありません!!」
私は目の前の財布…しかも中から溢れんばかりのお金を見て言う。
「しかし、実際のところ、君の鞄から出てきたんだ。どうであれ、君は罰を受けなくてはならない。それに、君しかあの時お金を盗むなんてこと、できないんだ。」
「そんなっ!」
先生達の目が痛い。私は訳の分からない感情を抑える。

ーなんで?誰がこんなこと…。

鞄の底から出てきた。故意としか思えない。 私は唇を噛む。
「…君には一週間学校を停学してもらう。自宅で課題でもやりなさい。」
「そ、んな。待ってください!私は…!」
「ごちゃごちゃ言わずに言うことを聞け!!」
鉄人は怒りをあらわにする。信じてくれないようだ。担任も私から目を背けてる。


私は教室から荷物を取ってくるように言われる。教室のドアを開く。すると、皆の視線が痛かった。私は叫びたい気持ちを抑える。

「さいってーよね。人の財布を自分の物とでも思ってるのかしら。」
「あー。白石君も物扱いしてるんじゃないの?かわいそー!」
「俺の財布、まだみつからないんだ。ブランド物だし、じっちゃんがくれたものなのに…!」
「そういえば、俺のノートも見当たらないんだ。もしかして伊澤が盗んだんじゃね?」
「学校やめればいいのに」
皆の言葉が痛い。私は手に力を込める。口に力が入らない。席についてさらに絶句した。

ーひどい。

席にはゴミが置いてあった。鉛筆で《金泥棒》とも書かれていた。

私は前の席にいる朔をみる。朔は教科書を読んでいた。隣の席の司馬君は寝ていた。私は涙をこらえて机の中を漁る。

「ーいたっ!」

手から血が溢れる。花をいける剣山があった。

「えっ。何あれ?どんだけ金泥棒に怒ってんのよ」
「さあ?まあ、バチが当たったんだよ。」
女子の何人かが笑っている。私は鞄にたくさん詰め込んで飛び出るように出て行った。





親が迎えに来た。そんなことはしないっ!と怒ってくれる。しかし、先生達の対応は一点張りだった。私は泣くお母さんをなだめて学校を立ち去った。車には父もいた。私は何度も謝罪した。お母さんは私の手にある血を見てさらに泣く。父親は何も言わなかったが口らへの字に曲がっていた。私はそんな両親を見て感謝の気持ちであふれた。
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