【完】螺旋のように想いを告げて


 大学まで歩いて30分。
 昼時になってしまい、教授がいるかどうかわからない。



 少し待てばよかったかと、我ながら考えずに出てきたことにげんなりする。



 まだ蝉が鳴いている。
 東京とはいえ、公園や街路樹なんかで緑がわりとある。田舎に比べたら蝉の声は静かな方で、大合唱レベルのうるささはない。




「みんな元気かな」




 ふと蝉の声に咲良や祐介を思い出す。



 無料通信アプリで、たまに連絡を取り合うことはある。ただ、忙しいのを理由にして、実家に帰ることも招くこともしていない。



 それに電話にも出ない。
 声を聞いたら、咲良にも祐介にも会いたくなるから。

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