【完】螺旋のように想いを告げて
たまたまその日、咲良の親父さんが迎えに来ていて一緒に帰った。
咲良の家で母さんを待っていたんだっけ。
思い出した時は恥ずかしくなった。あの無口な親父さんの車に乗って、はしゃぐ咲良と一緒に帰った。
子供だったとはいえ、遠慮なく車に乗り込んだんだ。
今でも、雨の中にいたがるのは咲良との思い出があるからかもしれない。誰かが差し伸べてくれる手を待っているのかも。
でも、駄目だ。
誰かに頼るのではなくて俺から捕まえなければ。
「切るぞ。ああ、12月にな」
スマホを机に置き、開いていたノートを閉じる。
疲れていた頭が、咲良の声で元気になった。
「必ず約束は守る」
12月。
俺はそこで賭けに出る。
俺自身の手で、未来を掴み取る。