私と二人の物語
第8章
年末は両親が家にいる感じで出掛けられなかった。

年始も挨拶に来るお客さんが多くて、出掛けることはできなかった。

前もそうだったと、悟もそれは承知のことだった。


トントン。

「はい」

ノックの音に返事をすると、好江さんがドアを開けた。

「旦那様がちょっと下に降りて来るようにと」

「え?」

「篠田さんが新年の挨拶にお見えになってるので」

「ああ…はい。すぐに行くね」

「わかりました」

好江さんは頭を下げると降りていった。


トントン。

「お父さん」

私は応接間のドアをノックした。

「ああ、来たか。入りなさい」

「はい」

私は父の返事を聞いてドアを開けた。

私が部屋に入ると、暖炉を背にした父の斜め前に篠田さんが座っていた。

「本年もよろしくお願いいたします」

新年の挨拶をして、私は彼の真向かいに座った。

今日はいつも見かける白衣ではなく、スーツ姿で素敵だった。

話している姿には、院長やその家族に媚びた感じはなく、いつもどおりの柔らかな雰囲気。

「最近、君の腕に頼ってばかりのシフトで申し訳ない」

父が軽く頭を下げた。

「院長、そんな…」

彼は軽く手を振りながら少し恐縮ですという感じで言った。

まだそんな誠実さと若さはあるけど、判断力、決断力もありそうで、確かに父の後を継げそうな人だと思う。
< 107 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop