私と二人の物語
私は、さあ聞ききます、という感じで、背筋を伸ばして、手を膝の上で軽く組んだ。

もちろん、聞かれるコトはわかっていた。

「美緒さん、その…」

私はそのまま待った。

「その、記憶の方は…どうだ?」

「やっぱり、そのことですよね」

私は少し間をあけた。

「まだ、何も」

私はそう言いながら軽く頭を振った。

「あ、すまん!すまん!」

勉さんが慌てた。

「ううん。気にしないで」

私は笑顔で言った。

「ただ…何かを思い出し掛けた時に、時々頭痛がするの」

ふと思い出して言った。

「そうなのか?」

「うん」

「それは記憶が戻りかけているということなのか?」

「わからないけど、そんな気がする」

「そうか…」

勉さんが、少し嬉しそうに笑った。
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